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2006年12月20日 (水)

柿の木

Kakinoki 小さい頃の記憶に、夕方兄が父に叱られて、泣きじゃくっていた、ということがある。おぼろげな記憶だが、学帽によそ様の畑でとれた果物を失敬して、それで叱られていたのだと思うのだが、その失敬してきた果物が、柿なのか、ビワなのか、グミなのかはっきりしない、それほど子供の頃はあちこちでいろいろなものをいただいたものだ。

では自分の家に果物はないかといえば、ちゃんと同じものが自家用に植えられている。どうも、余所のものの方が美味しく感じられてしまう心理で、これは誰も同じなのか、我が家のものは他人が味見してくれる。

ということで、取ったものを売りに行ったり、食べないで捨てたりしない限り、果物泥棒が問題になることはなかった。

『柿の木』動物写真家でもあり、自然界と人間界の橋渡し役の宮崎学さんが、信州にある何の変哲もない樹齢80年の柿の木を2年に渡って撮り続けた写真集が出た、いや詩集といっても良い。

季節ごとの、一本の柿の木を巡る季節ごとの風景から、柿の木の主の老婆の話は、小説のような派手さはないが、明らかに一つのドラマであり、我々に忘れている何かを思い出させる物語である。正直な話、団塊の世代から我々が見れば「やられたなぁ」という、爽やかな読後感を味わうことができる。

柿の木  宮崎学:著 偕成社  1200円

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