現在、国会での審議が大詰めを迎えている、入管法改正案。3月に法案が提出され、5月上旬に衆院を通過。参院で審議中だが、6月の上旬には可決、成立する見通しだ。

 現行の入管法では、不法残留状態の外国人も、難民認定手続き中であれば一律に送還が停止される。改正案の肝はその規定を改め、3回目以降の難民申請者については強制退去を可能にすることだ。

 なぜか。

 2021年12月末時点で、強制退去の対象となっているにもかかわらず、退去を拒む「送還忌避者」は3224名。そのうちの約半数に当たる1629名は難民申請中であるがゆえに送還が停止されている。しかし、その中には退去を回避する目的で申請を繰り返す者、つまり、難民に直ちに該当しないにもかかわらず、制度の誤用、濫用が疑われる者がいるため、運用を適正化するのが狙いだ。ちなみに、送還忌避者のうち、前科を持つ者は1133人もいる……。

「12月25日は何の日?」に答えられない自称・キリスト教信者

「イラン出身の“難民”男性はキリスト教に改宗し2年半毎週教会に通っている。帰国すれば迫害されると主張しました。でも、“12月25日は何の日ですか?”と聞くと、“サンタクロースの誕生日”と言うんです。ウガンダからの男性は、自分は同性愛者だから帰れば死刑にされる、と。確かにウガンダではそうしたケースがありますが、男性には実は、子どもが2人いたんです」(前出・男性参与員)

 ミャンマーの申請者も、

「反軍事政権デモに出ていたので逃げてきたと言うのです。しかしデモの日付を聞くとパスポート上、既に日本にいた期間になっている。また、スリランカの男性は野党の支持をしていたので迫害されたと言う。しかし、ではその野党の党首は?と聞いても答えられない。フィリピンではドゥテルテ政権で麻薬の取り締まりが厳しくなった。自分は麻薬をやったことがあるので帰れないという人も。しかし、麻薬の色は?と聞いても答えられない」

 こうした事情もあり、昨年の不服申立てによる審査請求のうち、難民と認められたケースは4461人中15人に過ぎない。

一度申請を出せば2年間は日本に滞在できる

 なぜこうした難民申請が繰り返されるのか。

 前述した送還停止のメリットと共に、大きいのは経済的理由だ。以前は日本に入国し、難民申請を行えば、6カ月経過後、就労が可能になった。この制度以降、難民申請者が急増した。

「そのため審査が滞り、長期化しました。現在は2年超かかります」

 と先の男性参与員が言う。

「つまり“難民”は一度申請を出せば数年は就労が可能です。そして参与員の審理の最中もまた数年就労が可能なのです。ですから申請を出すこと自体が目的で、難民として認められるか否かはどうでもいいと考えている人が多いように見えます。入管庁の統計でもわかるように、不服申立てをした申請者の4割超が、弁論放棄といって口頭意見陳述もせずに書類を出すだけで済ませていますからね」

 6月1日発売の「週刊新潮」では、今回登場した以外の現役参与員たちにもインタビューし、知られざる入管の実態について詳報する。

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