死の貝
この本、実に面白かったです。面白かったと言えば語弊があるかもしれませんが、日本人が日本人の力で明治から大正、そして昭和の時代に、一つの病気(日本住血吸虫症)の発見をして、そのメカニズムも解明。なおかつ、治療方法まで確立、その過程を克明に伝えてくれているのが、この本ですから皆様にもぜひ読んでいただきたいものです。そして、外国にも同じような病気があり、その解明、治療にも大きく貢献したというのですから、文中にもあるようにノーベル賞ものだったと言えます。
私がこの『日本住血吸虫症』のことを知ったのは、小学生の頃の白土三平さんのカムイ伝だったっかカムイ外伝で、敵を日本住血吸虫の居る、池におびき出して感染させるというものでした。貝(ミヤイリガイ)が敵の足を匍匐していて、いかにも感染しそうな描写でしたが、実際には貝から直接哺乳類に感染するのではなく、中間宿主であるミヤイリガイの中で育った日本住血吸虫の、セルカリアが水中に放出され、そのセルカリアが人間を含む哺乳動物の皮膚から浸入、血管を通り、体内の臓器で雌雄が合体し、卵を産み続ける。というもので、その成虫と莫大な数生み出される卵により宿主である哺乳動物が弱って死んでいくという過程をたどってきたようです。
この病気は昭和の初期まで、山梨県を始め広島県、九州の佐賀や福岡県で郷土病として怖れられたのですが、原因がその頃は不明ですから、さぞかし差別も多かったと思われます。
その病気の解明の研究を行ってくれた方々の、行動と研究過程を逐一知らせてくれるのが、この『死の貝』です。
日本住血吸虫症の恐ろしさと、いかに困難な研究だったかが良く分かります。
しかし、この本の題名ですが、確かに日本住血吸虫の中間宿主となり、病気を介在したのはミヤイリガイでしたが、実際は貝に罪はなく、現在では絶滅寸前なんだそうです。
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